平成のマルコポーロ 芦原伸の「シルクロード鉄道紀」 トップに戻る

トルクメニスタン

緊張の国境越えのはずが・・・

8/9(日) トルクメニスタン

  いよいよトルクメニスタンに入国する。トルクメニスタンは中央アジアのなかでも特殊な国で、北朝鮮のようにグルバングリ・ベルディムハメドフ大統領がいわば独裁制をしいているため、外国人の入国を制限している。日本には大使館がなく、現地でビザを入手しないと入国できない。イラン~中央アジアはシルクロードのメインロードだが、この国があるためになかなか通り抜けが難しいのだ。ところが、この企画に協力いただいている旅行会社・トラベル世界では毎年バスによる西安~ローマのツアーを実施しており、トルクメニスタンのビザ入手のノウハウをもっていたのだ。そこで協力をお願いした。

 日本から事前申請しておき、現地でビザを受け取る方法で、イラン国境近くのマシュハドへゆき、マシュハドからトルクメニスタンの国境へ。そこで約60ドル出して、正式なビザを受け取るのである。
 
 イランとトルクメニスタンは地図上では鉄道が繋がっているが、貨物列車だけで旅客はない。現地でビザを受け取るには陸路でゆかねばならない。車とガイドをチャーターしての半日行程だった。
 国境のパスポート審査は緊張した。なんせ今時分、日本人の個人旅行者などいないから不審がられるのは覚悟していた。近頃、麻薬密輸事件があり、警察との銃撃戦があったばかり。審査室は刑務所の独房のように閑散としている。 ところが椅子にふんぞりかえった出腹の審査員が「サムライ」、「ハラキリ」、「ショーグン」という日本語を知っており、ぼくの名が「SHIN(しん)」だということに興味を示し、「おしん!」「おしん!」と名を告げられて、握手され、思わぬ難関を突破したのであった。審査員が「おしん」の大ファンだったことが救いだった。 

20090809_turkmenistan.jpg
(写真 トルクメニスタンの市街) 
 さて、トルクメニスタンはイメージに反して、素晴らしく美しい国だった。砂漠のなかに緑がしたたり、新しい高層ビルが林立する。まるでシルクロードの近未来都市! 狐につままれたようである。しかし、どこを見ても市民の人影がない。人がいると思うと、男は軍隊か警察、女は公園の掃除婦だった。ただ大統領の巨大な彫像が街のあちこちで「オアシスの宇宙都市」を見下ろしていた。 

トラベル世界株式会社

旅人紹介

芦原伸 (あしはら・しん) 1946年生まれ。紀行作家。北海道大学文学部卒。雑誌「旅と鉄道」(鉄道ジャーナル社)のデスクを経て独立。日本旅行作家協会常任理事。近著に『鉄道おくの細道紀行』(講談社)『60歳からの青春18きっぷ』(新潮新書)など。