『至福の1年間。映画とスポーツに感謝~名作50本"観戦記"』
過酷かつ、楽しい仕事だった。50本。泣いた、笑った、夢をみた。ヒッチコック、ビリー・ワイルダー監督のつくりに唸り、ジェームズ・ディーン、マリリン・モンローの表情にうっとりした。スポーツでいえば、オリンピック取材を終えた時の幸福感に似ている。
2010年2月に始まった『午前10時の映画祭』とは、映画ファンの投票によって選ばれた珠玉の50本を週に1本ずつ、1年間かけて全国各地で上映する企画だった。ぼくは鑑賞する映画館を、六本木ヒルズのTOHOシネマズと決めていた。販売スタートの2日前の深夜零時にパソコンでチケットをゲットする。5分で完売となることもあった。酔っ払って寝てしまい、チケットを買いそびれたこともある。それでも何とか確保する。いつもわくわくして足を運んだ。
映画館に入れば、ポップコーンのにおいがしてくる。人いきれ、ホットドッグやコーヒーのかおりも漂い、どこかアメリカの地方球場のようなあたたかい空気なのだ。30本を超えたあたりから、顔なじみのおじさんも増えてきた。どの目も青年時代のそれだった。
スポーツを取材して、ざっと30年となる。いろんな一流選手や好勝負をみてきた。映画をみていたら、時々スポーツシーンを思い出すことがあった。『ゴッドファーザー』のマーロン・ブロンドは国際オリンピック委員会のアントニオ・サマランチ前会長みたいだったし、『ブリット』のスティーブ・マックイーンはF1のアイルトン・セナみたいだった。『鉄道員』の父親役のピエトロ・ジェルミはプロ野球の江夏豊の孤独を蘇らせた。一番好きな『大脱走』はサッカーのワールドカップ(W杯)のドリームチームである。例えば、1982年スペイン大会のブラジルの「黄金のカルテット」なのだった。
上演後、必ず誰かにインタビューした。目が憂いを帯び、「永遠の青春」を口にしてくれた。最後の『ショウほど素敵な商売はない』の時、「映画って何ですか?」と聞いたら、61歳の男性は小さく笑って答えてくれた。
「映画ほど素敵な娯楽はない」
【編集部より】
1年間にわたって「スポ根的映画論『名画50本ノック』」をご愛読いただき、ありがとうございます。松瀬学氏が毎週、映画館に足を運び、スポーツライターの視点で描いた「元気の出る映画コラム」が、名画の魅力を再発見するきっかけとなれば幸いです。『午前十時の映画祭』は好評につき、2011年2月から作品数、開催劇場を拡大して第2回が開催されます。1年目からの25劇場では新しい50本(Series2/青の50本)を上映、新たに加わった25劇場では1年目の50本(Series1/赤の50本)が上映されます。作品やスケジュールなど詳しくは『午前十時の映画祭』の公式HP(http://asa10.eiga.com/)をご覧下さい。








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