『まさにスリルとサスペンス~北北西に進路を取れ(1959年)』
そんなバカな、と何度もつぶやく。奇想天外、あり得ない展開がスピーディーに続く。でもオモシロい。またもヒッチコックにやられてしまう。歴代大統領のモニュメントがあるラシュモア山を這って降りる追跡シーンなど、もはや笑うしかあるまい。
美男のケーリー・グラント する広告代理店の社長、ロジャーが、カプランなる人物に間違えられて連行される。カプランは情報部の架空の人物。なぜ。どうして。なぜなのだ。ナゾが膨らむ。ストーリーを生真面に追う映画ファンにはほんと疲れる。
ここからサスペンスの連続である。とくに広々とした農耕地で複葉機に襲われる有名なシーン。グラントがネクタイをばたつかせながら、走って逃げまくる。転んで、地面に伏せる。クローズアップされる必死の形相がこちらの緊張感を高める。そこまでやるか、ヒッチコック!
このサスペンスと疲労感は、ことしの日本シリーズと同じだった。ロッテと中日。史上最長となる延長15回引き分けの第6戦。最終第7戦もスリリングな延長戦となり、我が地元のロッテが逆転で日本一に就いた。
どうなるかわからない。奇跡に近いプレーが続出する。まるでサスペンス映画なのだ。ロッテ主将の西岡剛はさながらグラントか。やわらかい打撃と華麗な守備は、ハリウッドスターのカッコいい動きを連想させる。
マスクはともかく、ふたりの共通点は姿勢の良さである。背筋を伸ばし、立ち姿が良い。グラントの引き締まった上半身もさすがである。
敵か味方か。列車で出あうのが、金髪の美女イヴ役のエヴァ・マリー・セイント。それほどイロッポクはないけれど、なぜか気になるタイプである。グラントが言う。「生き延びたら、一緒の汽車で帰ろう」。セイントが聞く。「お誘い?」。グラント曰く。
「プロポーズさ」
ヒッチコック映画にはスリルだけでなく、微笑を誘うユーモアと気のきいたせりふもついている。
「北北西に進路を取れ」
製作国:米、日本公開:1959年。巨匠ヒッチコックによる、冒険活劇的なアクションミステリー。主人公が予期せぬトラブルに巻き込まれるというヒッチコック・サ
スペンスの王道であり、彼の映画特有のお約束に満ちた、集大成的な作品ともいえる。(「午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本」解説より。公式HP:http://
asa10.eiga.com/)

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