『リアリティーゆえの迫力~十二人の怒れる男(1959年)』
アツい。暑苦しい。息が詰まる。真夏の閉じられた部屋。12人の陪審員の額に汗のツブが浮かぶ。シャツも汗で濡れ、目に怒りが満ちてくる。このリアリティー。この迫力。映画館で見ているこちらもゾクゾクする。
法廷劇の傑作である。レジナルド・ローズの脚本の勝利である。うまい。会話や流れの妙に引き込まれてしまう。中心がヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番の「良心」。有罪(死刑)に確信が持てないとひとり無罪を主張する、その強じんな意志である。
スポーツのキャプテンもまた、孤立を恐れない意志が求められる。女子バレーボールは補欠を入れて1チームが12人。2003年。全日本女子は長い低迷に沈んでいたとき、柳本晶一新監督はベテランの吉原知子を全日本に復帰させ、キャプテンに据えた。
シドニー五輪出場を逃し、「負け犬」と化していた全日本は何事にも弱気だった。ただ闘将吉原はその雰囲気に怒り、五輪メダルを信じ、時には早朝4時半から自主練習を始める。熱気が充満する体育館。他のメンバーも迫力に押され、最後は全員が自主練習するようになる。戦う集団に変ぼうする。
ついにアテネ五輪出場をつかむ。全日本の合宿を取材するたびに感じた息苦しさは、この映画にも共通するものだった。闘将の五輪への執着と陪審員8番の真実へのこだわり、全日本メンバーと陪審員たちの心の揺れ、葛藤。最後は全員がひとつになる。そこに何とも言えない爽快感をおぼえるのだ。
「オモシロかった」と夫婦は声を合わせた。40代の夫は「理論派がいれば、感情的な人もいる。顔のアップとせりふの迫力に圧倒されました」と言えば、30代の妻もしきりにうなずく。「ひとり一人の性格付けがしっかりしている。陪審員制度のやり方、危うさもよくわかりました」
そうなのだ。日本でも導入された裁判員制度。法務省はこの映画をPR代わりに国民に見せればいい。「偏見は真実をくもらせる」とのH・フォンダの言葉は裁判の金言であろう。
「十二人の怒れる男」
製作国:米、日本公開:1959年。いわゆる「法廷劇」の代名詞ともいえる、密室ドラマの金字塔。もとはテレビドラマとして製作された作品で、陪審室のみを舞台とする密室劇ながら、スクリーンでもまったく遜色ない傑作に仕上がっている。低予算でもこれだけの映画が作れる、というお手本のような作品だ。
午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本」解説より。公式HP:http://asa10.eiga.com/)
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