本誌人気コラムが「談」に登場!ブログ時評、Asablo(アサブロ)。評論家・滝田誠一郎が話題のブログ&ツイッターを総まくり トップに戻る

第58回 可能性感じる"エロ歌人"

■外に出すのが愛なのか中で出すのが愛なのか迷って出した
■それなりに心苦しい 君からの電話をとらず変える体位は

 歌人、ブログ歌人、ときにエロ歌人を名乗る佐々木あららさん(36歳)の代表作だ。

 ブログ歌人という肩書は、あららさんの歌人としての出自を物語っている。まったく興味のなかった短歌をあららさんが作りはじめるのは2004年のこと。歌人・枡野浩一さんが主宰していた短歌投稿ブログ「枡野浩一のかんたん短歌blog」への投稿がきっかけだった。「03年に自分のブログを立ち上げたのですが、そのブログのアクセス数を増やしたくて短歌を投稿しはじめた。短歌が採用されると枡野さんがリンクを張ってくれるので」

 03~04年当時、あららさんは体調を崩して仕事(東京大学先端科学技術研究センター特任研究員)を休職し、半ば引きこもりのような生活を送っていた。結局そのまま退職することになり、ほぼ同時に離婚も経験する。公私にわたるダメージから立ち直るためのリハビリを兼ねてはじめたのがブログであり、ブログのアクセス数を増やす一つの手段としてはじめたのが短歌だったというわけだ。
「小さい頃から文章を書くのが好きだったこともあって、短歌を作りはじめたら新たな文章の創作活動が面白くて夢中になった。すぐに作った短歌を自分のブログで発表するようになり、冗談半分で日本でただ1人のブログ歌人を名乗るようになった」

 エロ歌人という肩書?は、あららさんの作品の一つの方向性を示している。「短歌を作りはじめた頃、なぜか性愛をテーマにした歌の評判が高かった。あっけらかんとセックスを歌う男の歌人はほとんどいないので、そっちの方向でやってみたらどうだと枡野さんにアドバイスされたりして、僕自身そういうのは嫌いじゃないし、ポンポン作れちゃうので、なんとなくそっちの方向に進んでしまったという感じですね。それ以外の短歌も多いんですが、基本的には女にだらしがない駄目な男というキャラクターで、それが僕の実態なのかどうかわかりませんが、そういう目線で歌を作っていきたいなとは思っています」

 あららさんには"犬猿"の制作者、〝星野しずる〟の生みの親という肩書もある。犬猿とは、あららさんが一晩で作り上げた短歌の自動生成プログラム。これを使うとコンピューターが無関係な言葉を組み合わせて斬新なイメージの短歌を勝手にどんどん作り続ける。コンピューターが作った犬猿短歌の作者、それがあららさんが生みだしたヴァーチャル歌人、星野しずるだ。
「異なる二つの言葉を組み合わせて詩的飛躍のある作品を作る手法を二物衝撃といいます。僕はこの手法に頼って雰囲気だけで作られているような短歌には批判的なんです。そんなものは辞書をパラパラめくって単語を適当に組み合わせれば作れる。人間のクリエイティビティーはもっと違う方向につぎ込んで欲しいという僕なりの批判であり、メッセージを込めて作ったのが犬猿です」

 ブログと短歌。これもまた二物衝撃といっていい組み合わせだ。この組み合わせから新たな短歌が生まれる可能性を感じる。

 ■佐々木あららさん

佐々木あららさん.jpg

■「中で出すのが愛なのか」
http://ararara.exblog.jp/

佐々木あらら.JPG

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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
■ブログ「わたし、ブログ評論家です。」
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