2010年10月
第58回 可能性感じる"エロ歌人"
■外に出すのが愛なのか中で出すのが愛なのか迷って出した
■それなりに心苦しい 君からの電話をとらず変える体位は
歌人、ブログ歌人、ときにエロ歌人を名乗る佐々木あららさん(36歳)の代表作だ。
ブログ歌人という肩書は、あららさんの歌人としての出自を物語っている。まったく興味のなかった短歌をあららさんが作りはじめるのは2004年のこと。歌人・枡野浩一さんが主宰していた短歌投稿ブログ「枡野浩一のかんたん短歌blog」への投稿がきっかけだった。「03年に自分のブログを立ち上げたのですが、そのブログのアクセス数を増やしたくて短歌を投稿しはじめた。短歌が採用されると枡野さんがリンクを張ってくれるので」
03~04年当時、あららさんは体調を崩して仕事(東京大学先端科学技術研究センター特任研究員)を休職し、半ば引きこもりのような生活を送っていた。結局そのまま退職することになり、ほぼ同時に離婚も経験する。公私にわたるダメージから立ち直るためのリハビリを兼ねてはじめたのがブログであり、ブログのアクセス数を増やす一つの手段としてはじめたのが短歌だったというわけだ。
「小さい頃から文章を書くのが好きだったこともあって、短歌を作りはじめたら新たな文章の創作活動が面白くて夢中になった。すぐに作った短歌を自分のブログで発表するようになり、冗談半分で日本でただ1人のブログ歌人を名乗るようになった」
エロ歌人という肩書?は、あららさんの作品の一つの方向性を示している。「短歌を作りはじめた頃、なぜか性愛をテーマにした歌の評判が高かった。あっけらかんとセックスを歌う男の歌人はほとんどいないので、そっちの方向でやってみたらどうだと枡野さんにアドバイスされたりして、僕自身そういうのは嫌いじゃないし、ポンポン作れちゃうので、なんとなくそっちの方向に進んでしまったという感じですね。それ以外の短歌も多いんですが、基本的には女にだらしがない駄目な男というキャラクターで、それが僕の実態なのかどうかわかりませんが、そういう目線で歌を作っていきたいなとは思っています」
あららさんには"犬猿"の制作者、〝星野しずる〟の生みの親という肩書もある。犬猿とは、あららさんが一晩で作り上げた短歌の自動生成プログラム。これを使うとコンピューターが無関係な言葉を組み合わせて斬新なイメージの短歌を勝手にどんどん作り続ける。コンピューターが作った犬猿短歌の作者、それがあららさんが生みだしたヴァーチャル歌人、星野しずるだ。
「異なる二つの言葉を組み合わせて詩的飛躍のある作品を作る手法を二物衝撃といいます。僕はこの手法に頼って雰囲気だけで作られているような短歌には批判的なんです。そんなものは辞書をパラパラめくって単語を適当に組み合わせれば作れる。人間のクリエイティビティーはもっと違う方向につぎ込んで欲しいという僕なりの批判であり、メッセージを込めて作ったのが犬猿です」
ブログと短歌。これもまた二物衝撃といっていい組み合わせだ。この組み合わせから新たな短歌が生まれる可能性を感じる。
■佐々木あららさん

■「中で出すのが愛なのか」
http://ararara.exblog.jp/
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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
■ブログ「わたし、ブログ評論家です。」
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第57回 ブログで稼ぐ!
1000万人を超える会員数を誇るアメーバブログを運営しているサイバーエージェントの藤田晋社長は、今から4年ほど前に自身のブログ「渋谷ではたらく社長のアメブロ」の中で次のように予言している。
〈近い将来、人気ブログを書く個人が、今とは桁違いの収入を得られる時代になるでしょう〉
〈単なる副収入という訳ではなく、個人でブログメディアを持ち、これを本業として生活する人も増えていくでしょう〉
4年後の今、藤田社長の予言は現実のものになりつつある。アフィリエイトやドロップシッピングで収入を得ている人、ブログに広告を貼り付けて収入を得ている人、ブログが書籍化されて印税収入を得る人などなど、さまざまな形でブログから収入を得ている人が少なからず存在する。ただし桁違いの収入を得ている人はごくごく少数にすぎないが。
アフィリエイトとは成果報酬型広告の一種。Amazonを例に取ると、たとえばAさんが『暴走検察』(上杉隆著)の書評を自分のブログに書き、同時にAmazonの『暴走検察』のページにリンクを張ったとしよう。Aさんのブログを訪れた読者が書評を読んで興味を覚え、リンクを辿ってAmazonに飛んで『暴走検察』を購入すると、AmazonからAさんに対して税抜き価格の3~8%(紹介料プランおよび紹介点数によって異なる)が支払われる。これがアフィリエイトの仕組みだ。
"アフィリエイトで月10万円の副収入"などという書き込みをネット上で見かけるが、実際にはそんなに儲かるものではない。紹介料ゼロということがざらであり、頑張っても年間数百~数千円という人が大半だろう。もちろん1日に1万人、2万人もの読者が押し寄せる超人気ブログになると、アフィリエイトの紹介料が年間数百万円になることもあるが、それは小飼弾さんや堀江貴文さん、池田信夫さんら超人気ブロガーに限った話。以前Asabloに登場いただいた池田さんは、アフィリエイトによる売り上げは「駅前の小さな書店と同じくらい」あり、その売り上げに対する紹介手数料は「ブルーカラーの年収くらい」といっていた。ざっと400万円前後!? ちなみに矢野経済研究所は2012年度のアフィリエイトの市場規模は1235億円に達すると予想している。
ドロップシッピングとは、ブログなどで商品を宣伝して注文を受け付け、注文が入ると製造業者や卸業者に取り次ぎ、業者のほうから直接商品を注文主に配送させるネットショップ運営の一形態。自分で設定した小売値と卸値との差額が収入になる。開業資金ゼロで、在庫を持たずにネットショップを開業できるのがドロップシッピングの大きな魅力だが、残念ながらドロップシッピングで大儲けしたという話は聞いたことがない。アフィリエイトにしろドロップシッピングにしろ、実際にはそう簡単に儲けることができるわけではないのだ。
総務省情報通信政策研究所がまとめた『ブログの実態に関する調査研究』(2009年)によると、アフィリエイトやドロップシッピングを主にした収益重視型のブログは全ブログの10.1%を占めるという。収益重視のブロガーが300万人近くいる計算だ。
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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
■ブログ「わたし、ブログ評論家です。」
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第56回 「読書の秋」おススメのブログ
読書の秋にひっかけて今回はビジネス書のブログランキングを紹介しよう。ビジネス書に限った話ではないが、本のブログは大きく2つに分類することができる。書評ブログと読書感想ブログの2つだ。今回紹介するランキング(一覧参照)でいうと①②④が前者、③と⑤が後者に分類することができる。
ランキング1位の「マインドマップ的読書感想文」はamazonの内容紹介、目次、内容の抜粋、そして感想を書き加えるオーソドックスな書評ブログのスタイル。ブログで紹介した記事の人気ランキング、紹介した本の売り上げランキングなど、書評内容を客観視できるよう工夫している点が書評の信頼性を担保している。2位の「 ビジネス本でバージョンアップ2.0!」は紹介している本のおすすめ度を点数で、おすすめ内容を星印の数で示すなどの工夫が凝らしてある。視覚的なわかりやすさが読者に受けて好位置キープといったところか。
一方の読書感想ブログはピンキリの玉石混淆というのが正直なところだが、さすがに人気ランキングの上位に顔を出すようなブログは面白い。読み物としては書評ブログよりもずっと面白い。3位の「女子勉-ビジネス書の力で女性を元気にする!」はフリーのWEBデザイナーである勉子さんが働く女性のために書いているブログ 。5位の「ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~」は片道1時間45分の通勤時間を利用してハマの読書王子さんが読んだ本を紹介しているブログだ。
この2つのブログに共通している面白さは、単にビジネス書の読後感想を綴っているだけでなく、紹介しているビジネス書から何かを学ぼうとしている姿勢がはっきりとうかがえるところ。ビジネス書から得た気づきや知識をビジネスの場で実践し、成長し続けている様子までもがブログ全体から感じ取れるところが非常に興味深 い。
たとえば勉子さん。勉子さんは3年前まではビジネス書とはまったく無縁だった。ところがある日、「私って自分の脳力をちゃんと生かせてる?」とフッと思い、その答えが見つけたくて生まれてはじめて書店のビジネス書コーナーの前に立つのである。このとき勉子さんが手にしたのが『「1日30分」を続けなさい!』(古市 幸雄著)だった。この本を読んだのをきっかけにビジネス書で自己啓発に励む習慣が身に付き、「ビジネス書の面白さを多くの働く女子に伝えたい!」との思いからブログを立ち上げる。ビジネス書を読み続け、ブログを書き続けていくにつれて、勉子さんの世界がどんどん広がっていく様子が見て取れる。今年9月には『世界一わ かりやすい4コマビジネス書ガイド』という本も出版されている。
過去4年間に500冊のビジネス書を紹介してきたハマの読書王子さんの場合も、ブログを通して成長の跡をうかがい知ることができる。もし何らかの事情で転職するようなことがあったときには、このブログを志望企業の採用担当者に見せればいい。ハマの読書王子さんがいかに自己啓発に取り組んできたかが一目瞭然で、最高 のPR材料になるはずだ。
■「女子勉」(上)と「ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~」(下)のトップページ
■ビジネス書ブログランキング
1 マインドマップ的読書感想文
2 ビジネス本でバージョンアップ2.0!
3 女子勉-ビジネス書の力で女性を元気にする!
4 読書1万時間
5 ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~
※「人気ブログランキング 本・読書ブログランキング [ビジネス本]」(10月3日現在)から
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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
■ブログ「わたし、ブログ評論家です。」
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第55回 都会の孤独を表現するポエム漫画
ブログ「東京の街に出て来ました」は4コマ漫画のスタイルこそ取っているが、それがそのまま叙情溢れる一編の詩になっている。朴訥(ぼくとつ)な絵と言葉、そしてセピア調の色彩が、都会の孤独を詩的に表現している。作者の垣内ひろしさんは、そんな自身の作品をポエム漫画、略してポエ漫と呼ぶ。自ら考え出した造語だ。「ブログをはじめてすぐに今のスタイルになって、ほんまにはじめて自分だけのものが作れているっていう実感があって、だけどこれはなんて呼べばええのかなと。漫画じゃないし、漫画詩というのもちょっと違うなと思って、じゃあポエ漫にしようと」
兵庫県出身。高校を卒業して数年は仲間たちとバンドを組み、プロを夢見て前衛的な日本語ロックを演奏していた。が、あるときフッとバンド活動に疑問を感じた。「バンドって何をするにしてもメンバーで話し合って決めるじゃないですか。そういうのって自分の性に合ってない。じゃあ自分一人でできることってなんやろか、と。そのときに閃(ひらめ)いたのが漫画だったんです。あ、ぼくは漫画が好きやって」
漫画は大好きで小さい頃から乱読していたが、自分で漫画を描いたことはなかった。漫画家になろうと思ったこともなかった。にもかかわらず垣内さんは「4コマ漫画くらいなら描けるかもしれん」と無謀にも思い込み、見よう見まねで4コマ漫画を描きはじめる。それが20代半ばのこと。「とりあえず4頁分描いて、これも無謀なんですけど、すぐに小学館に持ち込んだ。そうしたらすごい褒められたんですよ。絵は下手だけど面白いって。もっとたくさん描いて持ってきてくださいといわれて、持っていったら賞をもらった。『ヤングサンデー』の新人奨励賞みたいなのを。これやったら漫画家としてやっていけるかなと、ちょっと勘違いしまして(笑)」
これ以降、垣内さんは地元・兵庫でバイトをしながら4コマのギャグ漫画を描き、描いた作品を持って東京の出版社に売り込みに行くことを繰り返すようになる。意を決して上京したのは昨年10月のことだ。住まいは東京の西郊・八王子。家賃4万円のアパートを根城に、漫画を描くことと出版社回りに専念する生活をスタートさせた。上京するときにクルマを売って手にした数十万円の蓄えを当面の生活費に充てた。「部屋にこもって漫画描くだけですし、食費もキャベツばっか食べていてものすごく安くて、家賃含めて月に8万円あれば余裕で暮らせる(笑)」。まるで「神田川」や「赤ちょうちん」といったかぐや姫の歌が聞こえてきそうな暮らしぶりだ。そんな都会での一人暮らしをほぼ実話に基づいて描き続けている。「ポエ漫を描くようになってギャグ漫画はやめました。仮に注文があっても、もうギャグ漫画は描かない。自分にはポエ漫のほうが合っていると思うので、これからはポエ漫作家として生きていきたい」
上京して丸一年になるのを機に、垣内さんはいま新たなポエ漫ブログのテーマを模索している。

■「東京の街に出て来ました」
http://ameblo.jp/moimoi-com/
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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
■ブログ「わたし、ブログ評論家です。」
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