本誌人気コラムが「談」に登場!ブログ時評、Asablo(アサブロ)。評論家・滝田誠一郎が話題のブログ&ツイッターを総まくり トップに戻る

第41回 リストラ劇を克明に書いた「リストラなう」

経営不振に喘いでいる会社が窮余の策としてリストラを断行し、
その一環として希望退職の募集に乗り出す。
いまどき珍しい話ではないが、
もし自分がそのような目に遭ったらあなたならばどうする!?
 
たぬきちさん(仮名・45歳)が勤務していた会社
(売り上げ規模で業界10位前後に位置する準大手の出版社)が
希望退職の募集をはじめたのは今年3月中旬。
募集条件は以下の通り。
 
対象
①勤続15年以上で満50歳以上の全社員、
②編集部門以外の部門に勤務する
満40歳以上49歳以下の社員(勤続15年以上)、
募集人員は50人(対象者120人)、
募集期間は4月5~13日、退職日は5月31日。
 
「希望退職の募集がはじまっても自分には関係のない話だと思っていた。
それが、親しかった同僚が辞めるつもりだとわかったら、
とたんにリストラが身近なものに感じられて、
〝オレが辞めたらどうなるんだろう〟と考えてみた。
家族はいないし、家は賃貸だから住宅ローンもなくて身軽だし、
かなりの退職金がもらえるから辞めても何とかなりそうだ、と。
45歳という年齢もぎりぎりセーフと思えたし。
そう考えたら会社に残るよりも、会社を辞めるという選択肢のほうが
楽しそうに思えてきて、それで決めちゃった。
辞めて何をするというあてはなかったけど、
辞めると決めたら気分がすごくハイになった」
 
45歳で迎えた人生の転機。あてはないが何かできそうだという期待感と、
新たな人生に挑戦するという高揚感。
それがたぬきちさんが〝ハイ〟と表現する心理状態の正体だろう。
そんなハイな気分を胸の内にしまっておくことができなかったのか、
たぬきちさんはそれまで身辺雑記を綴っていた
ブログ「どんじりのブログ、たぬきち日記」のタイトルを
「たぬきちの『リストラなう』日記」に改め、
自らのリストラ劇を同時進行形で書きはじめる。
 
これが直後から大人気になる。
09年1月にはじめた「どんじりのブログ、たぬきち日記」は
10年3月末までの15カ月合計で1万PV(ページビュー)にすぎなかったが、
「リストラなう」は開始早々に1日1万~2万PVを記録し、
多いときには7万~8万PVに達することもあった。
開始3日目には早くも出版の話が舞い込んできた。
「多くの人に読まれるのは気持ちがいいですね」
と笑うたぬきちさんは「リストラなう」の人気の秘密を次のように分析する。
 
「8割方は『リストラなう』というタイトルの勝利だと思いますね。
自分も編集者時代にタイトルにはずいぶん頭を悩ませましたけど、
こんないいタイトルは思いついたことがなかった(笑)。
内容に関していえば、不況に喘ぐ出版業界が抱える問題点や出版社の実状を、
内部の人間があからさまに書いたことが受けたのかもしれません。
それと僕自身は社名はいっさい出さないようにしたのですが、
それが逆に〝どの出版社なんだろう〟という興味をそそったのかもしれない」
 
5月末日に出版社を退職したたぬきちさんの進路はまだ決まっていない。
当面はハローワーク通いを続け、その一方で公共職業訓練制度を使って
ウェブ系のスクリプト言語の勉強をするつもりだ。
ブログに寄せられた多くのコメントもあわせて収録した単行本『リストラなう!』(仮題)は
7月末に新潮社から出版される予定だ。
本の売れ行きしだいで進路が変わるかもしれない。
 
リストラなう.jpg

野良犬ダイアリー.jpg
リストラまでを綴った「たぬきちの『リストラなう』日記」(上)と、
リストラ後を綴った「たぬきちの野良犬ダイアリー」(下)


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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
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