本誌人気コラムが「談」に登場!ブログ時評、Asablo(アサブロ)。評論家・滝田誠一郎が話題のブログ&ツイッターを総まくり トップに戻る

2010年6月

第41回 リストラ劇を克明に書いた「リストラなう」

経営不振に喘いでいる会社が窮余の策としてリストラを断行し、
その一環として希望退職の募集に乗り出す。
いまどき珍しい話ではないが、
もし自分がそのような目に遭ったらあなたならばどうする!?
 
たぬきちさん(仮名・45歳)が勤務していた会社
(売り上げ規模で業界10位前後に位置する準大手の出版社)が
希望退職の募集をはじめたのは今年3月中旬。
募集条件は以下の通り。
 
対象
①勤続15年以上で満50歳以上の全社員、
②編集部門以外の部門に勤務する
満40歳以上49歳以下の社員(勤続15年以上)、
募集人員は50人(対象者120人)、
募集期間は4月5~13日、退職日は5月31日。
 
「希望退職の募集がはじまっても自分には関係のない話だと思っていた。
それが、親しかった同僚が辞めるつもりだとわかったら、
とたんにリストラが身近なものに感じられて、
〝オレが辞めたらどうなるんだろう〟と考えてみた。
家族はいないし、家は賃貸だから住宅ローンもなくて身軽だし、
かなりの退職金がもらえるから辞めても何とかなりそうだ、と。
45歳という年齢もぎりぎりセーフと思えたし。
そう考えたら会社に残るよりも、会社を辞めるという選択肢のほうが
楽しそうに思えてきて、それで決めちゃった。
辞めて何をするというあてはなかったけど、
辞めると決めたら気分がすごくハイになった」
 
45歳で迎えた人生の転機。あてはないが何かできそうだという期待感と、
新たな人生に挑戦するという高揚感。
それがたぬきちさんが〝ハイ〟と表現する心理状態の正体だろう。
そんなハイな気分を胸の内にしまっておくことができなかったのか、
たぬきちさんはそれまで身辺雑記を綴っていた
ブログ「どんじりのブログ、たぬきち日記」のタイトルを
「たぬきちの『リストラなう』日記」に改め、
自らのリストラ劇を同時進行形で書きはじめる。
 
これが直後から大人気になる。
09年1月にはじめた「どんじりのブログ、たぬきち日記」は
10年3月末までの15カ月合計で1万PV(ページビュー)にすぎなかったが、
「リストラなう」は開始早々に1日1万~2万PVを記録し、
多いときには7万~8万PVに達することもあった。
開始3日目には早くも出版の話が舞い込んできた。
「多くの人に読まれるのは気持ちがいいですね」
と笑うたぬきちさんは「リストラなう」の人気の秘密を次のように分析する。
 
「8割方は『リストラなう』というタイトルの勝利だと思いますね。
自分も編集者時代にタイトルにはずいぶん頭を悩ませましたけど、
こんないいタイトルは思いついたことがなかった(笑)。
内容に関していえば、不況に喘ぐ出版業界が抱える問題点や出版社の実状を、
内部の人間があからさまに書いたことが受けたのかもしれません。
それと僕自身は社名はいっさい出さないようにしたのですが、
それが逆に〝どの出版社なんだろう〟という興味をそそったのかもしれない」
 
5月末日に出版社を退職したたぬきちさんの進路はまだ決まっていない。
当面はハローワーク通いを続け、その一方で公共職業訓練制度を使って
ウェブ系のスクリプト言語の勉強をするつもりだ。
ブログに寄せられた多くのコメントもあわせて収録した単行本『リストラなう!』(仮題)は
7月末に新潮社から出版される予定だ。
本の売れ行きしだいで進路が変わるかもしれない。
 
リストラなう.jpg

野良犬ダイアリー.jpg
リストラまでを綴った「たぬきちの『リストラなう』日記」(上)と、
リストラ後を綴った「たぬきちの野良犬ダイアリー」(下)


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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
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第40回 災害時に役立つ消防庁のツイッター

FDMA_JAPAN──Fire and Disaster Management Agencyの頭文字を取った総務省消防庁のツイッター・アカウントだ。

FDMA.jpg
消防庁のツイッター画面

日本の行政機関初の認証済みアカウント(なりすまし防止のため米ツイッター社が間違いなく本人であると認めたアカウント)である。

このアカウントを使って消防庁がツイッターを開始したのは5月18日のこと。
具体的な活用法は以下の通り。

1)大規模災害時(震度5強以上の地震、死者行方不明者20人以上/全半壊1000棟以上の風水害等を想定)に消防庁が把握している情報を発信、

2)フォロワー(FDMA_JAPANの登録読者)から寄せられた災害情報のうち重要なものについて事実関係を確認、

3)災害に関するデマ等が広まるなどした場合に正確な情報を発信する。

FDMA_JAPANのきっかけになったのは23万人もの犠牲者を出した1月のハイチ地震であり、日本でも津波警報が発令された2月のチリ地震である。
ハイチ地震の時は各国のメディアが被災地の情報収集に苦心する中、現地の人々がツイッターで被災状況を発信し、それが米CNNテレビなどを通じて世界に配信された。
携帯電話さえあれば現地、現場からリアルタイムに情報を発信できるツイッターの威力がいかんなく発揮された。

その威力に着目したのが、昨年12月、現職大臣として初めてツイッターを利用しはじめた原口一博総務大臣だ。

原口ツイッター.jpg
原口大臣のツイッターの画面

2月のチリ地震の時には自ら津波の警戒情報をツイッターで速報した。
この時は勇み足だったのではないかとマスコミに批判されたが、原口大臣は「正確な情報を国民に伝えることを優先した」といって胸を張ったものだ。
ちなみに、参院予算委員会に遅刻した際にツイッターをやっていたことが判明し、"ツイッター遅刻〟と揶揄されるのはその4日後のこと。

ツイッターの威力を実感し、自ら実践した原口大臣の発案、指示によってスタートしたのがFDMA_JAPANというわけである。

6月10日現在、FDMA_JAPANのフォロワー数は1万7230人。
一個人でも数万人、数十万人のフォロワーを有する例が珍しくないツイッターに
おいて、
一国の防災情報システムのフォロワー数が2万人弱というのは
あまりにも少なすぎるように思う。
FDMA_JAPANによる効果的な情報発信を期すのであれば、
アカウントの周知徹底を図り、フォロワー数を増やすことが必要だろう。

もっとも、ツイッターのインフラはまだまだ脆弱で、ちょっとアクセスが集中するとすぐにビジー状態になってサーバーにアクセスできなくなってしまう。
もし今大規模災害があったらツイッターへのアクセスは不可能になり、FDMA_JAPANがまったく機能しないだろうことは十分予測できるというもの。

〝一民間企業のシステムに頼るのはいかがなものか〟という声もあるので、「mixiボイス」や「Amebaなう」など同様の機能を持つ他のシステムの利用も検討すべきだろう。

注文ついでにいうと、平常時は消防庁の報道提供資料などを発信しているが、これは不要ではないだろうか。港町の女性だけの消防団の話や消防職員の自宅からスズメバチの巣が見つかった話、非常時には炊き出し用かまどになる「かまどベンチ」の話などは要らない。

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たきた・せいいちろう 1955年生まれ。ノンフィクション作家/ブログ評論家。
著書に『65歳定年時代に伸びる会社』『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』など。
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第39回 旅気分に浸れる旅行ブログ

旅の思い出を写真と文章、ときに動画なども交えて記録する旅行ブログは、
育児ブログやペットブログなどと並ぶブログの定番。
多種多様の旅行ブログが数多く存在する。
旅の思い出をアルバム代わりにブログに記録・保存すると同時に、
楽しい旅の思い出を他の人にもお裾分けしたい、
多くの人たちと共有したいという気持ちが、
ブロガーたちに旅行ブログを書かせるのだろう。
 
以下、数ある旅行ブログの中でもひときわ人気の高いブログベスト5を紹介しよう。


インド洋に浮かぶ珊瑚礁の島々からなるモルディブの写真集
とでもいうようなきれいなブログ。写真に添える文章はなく、
テーマ別(人物・表情、海・清浄、リゾート・歓待など)に分類された写真が
スライドショー形式で次々に表れては消えていく。
幻想的なBGMとあいまって思わず見入ってしまう癒やし系ブログだ。
写真の出来映えといい、ブログの作り込み具合といい、
一見プロの仕事のようにも見えるが、あくまでも趣味にすぎないというから驚く。
 
2位、3位、4位には小田実の体当たり世界放浪紀行『何でも見てやろう』(1961年刊)を
彷彿とさせる旅行ブログがランクインしているのが目を引く。
 

地球に恋して.jpg
ブログを書いているぷにょみMAXさんは1年前の今ごろは歌舞伎町で働くキャバ嬢だった。
ある日の仕事帰り、いつもと同じように区役所通りをブラブラ歩いているときに
何か物足りなくて、何かが爆発しそうな衝動に駆られて世界一周散歩に出ることを決意する。
09年7月6日に成田を出発。以来これまでに訪れた国は36カ国を数える。
現在はペルーを散歩中だ。
 

世界一蹴の旅.jpg
南アフリカで開催中のサッカーW杯に出場している32カ国を
1年かけて巡る〝世界一蹴の旅〟に挑んだ
サッカーファン2人組(GKアシシ&FWヨモケン)による人気ブログ。
09年6月に日本を出発した2人は、出場国をすべて踏破して
今年5月に南アフリカ入りを果たしている。
W杯開催中はYouTube、Ustream、Twitterなどを駆使して
サポーター目線の生レポートをする予定だ。
 

シンガポール経由ケープタウン行きの航空券を持って飛行機に
乗り込んだのが今年2月14日。以後、目標も目的地も定めずに、ただ楽しむための旅、
自分を解放してくれる旅を続けているだださん(アラサー女性?)のマイペースなブログ。
あてどない旅が持つゆるい雰囲気が魅力のブログだ。
 

ハワイに恋い焦がれ、年1回のハワイ旅行(これまでに計約20回)を
心の支えにしている専業主婦レオンさんのブログ。ハワイのことをはじめ、
グルメや美容などリュクスなライフスタイルをゆる~く書いている。
ちなみにリュクス(LUXE)とは贅沢を意味するフランス語だが、
レオンさんは〝心の余裕を感じさせる豊かさ〟という意味で使っている。
 
■旅行ブログランキングベスト5(6月8日現在)

1 モルディブ 写真スライドショー 2.680枚 2010年度版
2 地球に恋して ~世界一周散歩~
3 世界一蹴の旅
4 地球の迷子
5 永遠の恋島ハワイ*リュクスな旅ブログ
 
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第38回 penpenさんの温かいマンガ

《ぬくもりが恋しくて 君を抱けば冬毛の猫よ ひざより先に こころがほんのりと あたたかい》

 ブログのトップページに自作の詩が載っているpenpenさんのブログ「50になってもまんがを描いている」は、まさに抱き上げた冬毛の猫から伝わってくるような心地よい温かさが魅力だった。
 
 多くの読者を引きつけていたその人気ブログに今年1月22日、突然終止符が打たれた。《【突然ですが、】母が今朝亡くなりました。落ち着いたら、また改めてご報告させていただきますが、皆さんにはとてもよくしていただいていたので取り急ぎご連絡いたします。娘より R.I.P Mom...I will love you forever...》

 享年51。早すぎる死を悼むコメントやメッセージが22、23の両日で300件以上も寄せられた。見ず知らずの人たちから寄せられた多くの哀悼の言葉に、娘のEriさんはずいぶん力づけられたという。
「こんなにたくさんの人が母のブログを見てくれて、母のことを気にかけてくれているとは思ってもみなかったので、びっくりすると同時にとても励まされました。私が知らない母の話を知ることもできたりしてうれしかった」

 penpenさんは子供の頃から自分は他の人とは何か違うという違和感を感じていた。10年ほど前、それが自閉症の一種であるアスペルガー症候群であることに思い当たる。それがブログをはじめるきっかけにもなる。

「同じ悩みを持つ方々とネット上で交流しているうちにブログのことを知り、もともと絵を描いたり詩を作ったりすることが好きでしたので、より多くの人に自分の作品を見てもらいたいという気持ちと、何らかのかたちでアスペルガーで悩んでいる人の助けになればという思いからブログをはじめたようです」(Eriさん)

 penpenさんにとって、ブログがありのままの自分を表現し、それでいて違和感なく多くの人と交流することができる貴重な場になっていたのだろうということは容易に想像がつくというもの。

 そんな母親のブログがEriさんは大好きで、以前はブログを見るのが日課だった。
「母らしいブログで大好きでした。話をするよりもブログを見たほうが母の思っていることが伝わってくるような気がするくらいです。もっとたくさんの作品を見たかった」

 penpenさんが亡くなってからEriさんがブログを見る回数はめっきり減った。「ブログを見ると母のことを思い出して悲しくなってしまう」からだ。しかし、母親の思い出が詰まっているブログはこれからも保存しておくつもりだとEriさんはいう。

 ちなみにpenpenというペンネームはペンペン草(ナズナ)に由来している。ナズナの素朴で可愛らしいところが好きだったというところに、penpenさんの人柄がよく表れているように思えてならない。合掌。


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第37回 毎日、長文で書く精神科医のブログ

和田秀樹さん(1960年生まれ、精神科医)は毎日長文のブログを書いている。
400原稿用紙6、7枚におよぶことも珍しくない。
ざっと2月で単行本1分くらいの文章量を書いている勘定だ。

2008年6月28日にブログを開始して以来
ほぼ連日ブログを書き続けているということなので、
合計では単行本12冊分の文章をこれまでに書いたことになる。大変な労力だ。
あまたいるブロガーの中でも、これほど精力的にブログを書き続けているブロガーは珍しい。

「思いついたことを思いついたときに、いいたいことをいいたいときに書いているだけ。
書きながら、いろんな反応や反論を想定して、
それに対する文章をどんどん足していっちゃう癖がある。
それもあって文章が長くなる」

一日にブログに費やす時間の目安は30分ほど。
わずかな時間で原稿用紙6、7枚分の文章を一気に書ききってしまうのだから、
何事にも素早く反応する高速かつ独自の思考回路の持ち主なのだろう。

その作業を毎日欠かさず続けているのは、
ブログをはじめた頃のちょっとした勘違いと自らの性格による、
と精神科医らしく自己分析する。

「最初ブログというのは毎日書かなければいけないものだと勘違いしていた。
で、毎日書き続けているうちに私は強迫性格なので毎日書かないとダメになっちゃった」

強迫性格の特徴は一言でいうならば自分のペースが崩れると
感情不安定に陥りやすいこと。
平たくいえば、やるべきことを徹底しないと気が済まない性格ということである。

「強迫の一番大きなポイントは〝止められない・止まらない〟ということなんです。
たとえば手洗い強迫の人は徹底的に手洗いすることが止められないとか」

止められない・止まらない状態が高じて、かつ度を超すと、
自分で行動や感情をコントロールできない中毒症状(依存症状)を呈することになる。

「精神医学界では行為に対する依存ということが最近注目されている。
薬物依存とかアルコール依存のように物質に依存するのではなく、
行為に対する依存症ですね。たとえば買い物依存とかセックス依存とか。
行為そのものの魅力に取り憑かれて、
あるいは行為そのものが完全に強迫を完成してしまって依存になる。
現実世界が閉塞すればするほど、そういう症例が増えていく。ネット中毒もその一つ。
日本にもかなりの数のネット中毒者がいると思うし、今後さらに増えると思う」

強迫性格を自認し、2カ月に単行本1冊のペースでブログを書き続けている和田秀樹さん自身は
ネット中毒なのでは?と尋ねたら苦笑いされた。

「毎日ブログは書いてますが、30分程度で文章を書き終えて、
さっさと次の仕事に移ることができる。止められない・止まらないということではないので、
ネット中毒ではないと勝手に思ってますけど(笑)」

ネット中毒ではないが、ネットにつながっていないと不安を覚える
"オフライン不安症"の傾向はあるというのが和田さんの自己診断結果である。

和田秀樹さん「テレビで言えないホントの話」

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滝田誠一郎ブログ「私、ブログ評論家です。」